位 置: | 青森県南津軽郡大鰐町東虹貝山586林班及び西虹貝山572林班 |
認定年月日: | 大正5年設定以来「大鰐学術参考保護林」として保護管理されてきましたが、平成元年「大鰐天然スギ・ヒバ混交保護林」と改称しました。 設定当時の学術参考林の名称については、次のように述べています。原文のままを記せば「国有保護林・国定原始林・模範林・演習林・試験林・樹種見本林等をここに総称して学術参考林と名付くこととせり」 |
設定目的 : | 天然スギ・ヒバ混交林における、植生等の変化を観察する目的で設定されました。 設定当時の目的には「大鰐保護林は、面積約百六十八町余歩、奥羽線大鰐駅より虹貝川に沿い、大鰐事業区国有林を経て、大鳥沢歩道より銅山沢一帯に亙り、稀有なる天然の美林とせられ、スギ、ヒバの混淆林又はヒバの単純林にして、林令百五十六年、同地方に於る杉林とヒバ林との林相推移の状況を見るに足りるものあり。」と記されています。原文のまま。 |
特 徴: | もともと天然スギは、秋田北部を中心に中腹から沢にかけて湿りけの多い肥えた土地を好み、またヒバは津軽、下北半島を中心に中腹から峰にかけた乾いた、条件の悪い土地に育つ性質をもっております。このように全く異質なものが共存し、美林を形成しています。 当時の設定意義については「学術参考林は、学術上又は施業上の参考として、保存する目的を以て仕立つる森林にして、その中国有保護林は、国有林中学術の参考となる林分及び保護を要する鳥獣若くは珍奇なる植物、その他天然記念物に関係を有する森林と認め、国に於て特に設定せるもの、国定原始林は、主として史跡名勝天然記念物として国より指定せられ、天然の状態をそのまま維持するため、林木は勿論林下の灌木・草類乃至る樹幹に纏絡せる蔓、その他林中に棲む禽獣の如きをも総て原始の姿を失わしめず、縦令枯損・風倒等の樹木と言えども之を伐採せざるもの又模範林・演習林・樹種見本林は、各その名を示す如く林業上の模範・演習・試験・樹種の見本に供するため、国若しくは道府県市町村その他に於いて設置せるものなり。但し模範林以下中には経済林の目的を兼ねるものありといえども、その区別明瞭ならざるを以て、是等はその名に従本章に記載することとせり。」と記載されています。原文そのまま。 |
標 高: | 200〜400m |
地 質: | 新第3紀中新世中紀(約3500万年前で火山活動の盛んな時代)の安山岩、石英粗面岩、凝灰岩が多い。 |
気 温: | 年平均気温10度前後(県内の平均) |
降 水 量: | 年平均2,040mm(県内では多い) |
積 雪 量: | 最深積雪1m前後 |
林 令: | 平均200〜300年 |
どうして混交したのか: | |
地質時代的にみて、新第3期中新世の中期までは海底にあったが、同期の上期から陸地となって西隣の相馬地方(旧弘前署管内)にヒバ林が形成され、その後新世の上期となって現在の付近一帯が陸地となったところに南隣の北秋田地方から天然スギが侵入して混交したものと推定されます。 |
国有林の保護林制度
国有林の[保護林制度]は大正4年、学術研究、貴重な動植物の保護、風致の維持等を図ることを目的とし70数年間続きましたが、国民の森林に対する要請も自然とのふれあいや、情操のかん養としての利用や、良質な自然環境としての保護を求めるものなど、内容が多様化しております。優れた景観を呈し、多様な動植物が生息する原生的な天然林を多く有する国有林において、保護を求める声が高くこのような情勢に対応するため、平成元年、既存の保護林を見直し再編・拡充を図ることとしたものです。新保護林制度においては、その目的に応じて、森林生態系保護地域、森林生物遺伝資源保存林、植物群落保護林、特定動物生息地保護林、特定地理等保護林および郷土の森の7種類としたものです。
森林生態系保護地域 | 森林生物遺伝資源保存林 | 材木遺伝資源保存林 |
我が国の主要な森林帯を代表する原生的な天然林の区域であって、原則として1,000ha以上の規模を有するもの。 | 我が国の自然生態系の類型を代表する森林と一体となって自然生態系を構成する生物の遺伝資源で原則として1,000ha 程度以上を目安とする。 | 主要林業樹種及び希少樹種等に係る材木遺伝資源で5ha程度以上とする。 |
森林生態系保護地域 | 森林生物遺伝資源保存林 | 材木遺伝資源保存林 |
(1)希少化している植物群落 (2)分布限界等に位置する植物群落 (3)湿地、高山帯等特殊な立地条件下の植物群落 (4)歴史的、学術的に価値の高い巨木等 (5)その他保護が必要と認められる植物群落 | 希少化している動物、他に見られない集団的な動物及びその他の保護が必要と認められる動物の繁殖地又は生息地で特に保護を必要とする区域。 | 特異な地形、地質等を有するもののうち特に保護を必要とする区域。 |
郷土の森 |
地域の特徴として意義を有する等により、地元市町村の強い要請がある森林を保護し、併せて地域の振興に資する。 |
「大鰐天然スギ・ヒバ混交林保護林」は、大正5年に設定され「大鰐学術参考保護林」として保護管理されてきましたが、平成元年の再編・拡充によって「植物群落保護林」となったものです。